2011年9月22日木曜日
エマニュエル出版記念会/バスティーユのレストラン
パリの街のいたるところに、このような、ちょっとした悪戯アートがある。
ふだん見なれた看板や標識が、よく見るとクスッと笑えるものになっていたり、通常のデザインのものよりも目をひく効果になっていたりする。私はこういう、ささやかなアートに心がくすぐられる。
今日もメトロでエスパス・ジャポン(以下E.J.)へ。
最近、メトロのあちこちに、ユニークでインパクトのあるポスターが貼り出されている。
シリーズになっていて、メトロ内でのいろんなマナー違反行為を、頭は動物・首から下は人の恰好をしたキャラクターでクローズアップしたものだ。
改札を乗り越えるカエル人間。これはホントによく見る光景。
他に、チューインガムを吐き捨てる駱駝、車内で携帯電話に夢中になって話す鶏人間バージョンもある。
どれも、「ああ、これ、あるある!」というものばかりで、リアルな動物の頭がついているだけで、その行為を特徴づけ、強烈に印象づけているのが、アイデアとしてうまいなあ、と思わせる。
ストラスブール・サン=ドニを散歩している途中、芸術系の古本を多く置いている「モナ・リゼ」書店を見つけた。LEWIS MORLEYの写真集(6ユーロ)と、TACHENから出ている"PARIS MON AMOUR"(20ユーロ)を買う。
いったんグザヴィエの家に荷物を置きに帰ってから、去年カイの個展をやってくれたギャラリーに行く。
預けていた写真が大雨で冠水し、夏休み中だったためそのままで放置され、使い物にならなくなってしまったという連絡を、今回パリに着いてから受けていたのだが、保険の申請のこともあるので、その状態を確認しに行った。
印画紙はふやけてフニャフニャになり、くっついていたものを無理矢理はがされボロボロになったもの、まだくっついたままのもの、カビがはえているものなどなど、見るも無惨な姿になっていた。
覚悟をして行ったものの、やはり打撃は大きかった。
別の袋に入れて保管していたという四切の写真は無事だったのが何よりの救い。
いたたまれなくて、すぐにギャラリーを退散。
E.J.へ戻る途中、ピガールへ寄る。
今日の夕方、アランさんから、漫画家のNicolas de Crécy(ニコラ・ド・クレシー)の個展のオープニングに誘われていたが、夜はエマニュエルとの予定が入っているため、今、少しだけのぞいてみることにしたのだった。
ニコラさんが京都に住んでいた時に、カイの店に来たことがあったのだったかどうか忘れたが、たしかヴィラ九条山のレジデントだったと思う。名前だけは覚えていた。
ギャラリーに行くと準備中で、入ろうとするとスタッフに制止されそうになったが、「アラン・ラメットさんの紹介で……」と事情を説明すると、ニコラさん本人が出て来てくれて、快く中に入れてくれた。
1991年〜2011年のデッサン500点を展示するらしい。
準備の邪魔になるといけないので、長居はせずに、すぐに引き揚げる。
(La Galerie Bdartist(e), 9区)
E.J.に戻ると、HATAOさん、ギランさんが見に来てくれる。
写真を熱心に見たあとで話しかけてきた60代くらいの男性が写真の値段を尋ねてきたので、半切サイズで600ユーロだといって値段表を見せると、今6ユーロしか持ってない、とからかわれるが、あらそうですか、と穏やかに返す。
19時にSaint-Germain-des-Prés(サンジェルマン・デ・プレ)でエマニュエルと待ち合わせ。
行く前にクレープをかじる。
エマニュエルの最新本が出たので、その出版記念会だった。
エマニュエルは、この出版社のディレクター、マリー・ピエールさんにカイを紹介してくれる。彼女は"6MOIS"というルポルタージュ誌を年に2回発行していて、カイにこの"6MOIS"をおみやげにくれる。
この雑誌に載せる事ができたら素晴らしいことだ、チャレンジしてみたらいい、とエマニュエルがアドバイスしてくれる。
("6MOIS"のホームページ http://6mois.fr/?lang=fr)
左がエマニュエル・ギベールの最新刊、右2冊がルポルタージュ誌"6MOIS"
平積みされていたエマニュエルの最新本の最後の1冊を手に入れる。
漫画とルポ写真がうまくコラボされた本。
本にサインをしてもらう。
左頁はエマニュエルのサイン。右頁上段はブックデザインをしたフレデリックさんのサイン、下段は写真を撮ったアランさんのサイン(好きな生写真を選ばせてくれた)。
つまりこれは3人で作った本ということで、3人のサイン会になっていた。
カウンター内、左に写っているのがアランさん、真ん中はエマニュエル、右はフレデリックさん。
本に出てくるジプシーの一団が歌と踊りをみせてくれる。
(彼女たちが所属するKesaj Tchaveのマイスペース→http://www.myspace.com/kesajtchave)
右に写っている、ジョアンナと少し喋る。エマニュエルの本の最後の章に、彼女たちの家族のことが載っている。彼女自身は残念ながら出ていないが、彼女の母親は写真の中にも絵の中にも出ていて、いろいろ説明してくれる。
最後にはエマニュエルも一緒に踊り出した。
帰りのメトロで、仮装した若者を見る。同じ車両に乗り合わせたので、カイが面白がってカメラを向けると、おどけてポーズをとってくれた。
バックパッカーが犬を連れて乗ってきた。パリのメトロはいろんな人がいて、飽きない。
バスティーユ広場で、今年もワインのブドウ積みの手伝いにきたHATAOさんと待ち合わせ。
"tintilou"という、HATAOさんの友人のレストランに連れていってくれる。
(レストランのホームページ→www.tintilou.fr)
HATAOさんはこの店を改装したとき、内装工事を手伝ってペンキ塗りまでした仲だという。オーナーでシェフのジャン・フランソワさんがHATAOさんを大歓迎。HATAOの友人なら、といってカイも歓迎してくれる。おまかせで美味しい料理も出してくれる。HATAOさんいわく、彼の料理は独創的でちょっと風変わりなフランス料理だけど、超一級!だそうだ。食べてみて納得。
まずはフォアグラとシャンパン。
オレンジ風味のソースとよく冷えたフォアグラがとても合う。ふだん私はフォア(肝)は苦手で食べないのだが、これはとても美味しかったので、HATAOさんの分まで分けてもらった。
メインの魚。メニューをみて注文したものではないので、よく覚えていないが、サーモンのような魚に、オリーブと細かい肉と、黒い米のリゾット(イカスミで炊いたのかな?)をつけあわせたもの。魚と肉を同時に出すなんて、ふつうしないが、うまい具合にお互いの味を邪魔しないように作ってあるのに感心。
2本目は、赤ワイン"La Charlotte"のシラー。
ワインに合わせてチーズもいただく。
デザートはチョコレート・ケーキ。
3本目も赤ワイン。ニーム(フランス南部)近郊の"Mas Neuf"というワイン。
お店の前で、HATAOさん、ジャン・フランソワさん、カイ。
料理のお礼に、カイは写真を1枚プレゼントする。
店内に飾ってくれるとうれしい。
歩いて帰れる距離だったので、歩いていると、前に行った「パリの八文字屋」の店先に看板ネコが見えた。客は入っていないようだ。80才のおばあちゃん店主は元気だろうかと少し気になったが、ネコが相変わらずなので、おばあちゃんも相変わらずだろう、と勝手に想像して、そっと前を通り過ぎた。