午前中、ヴェロニクさんが、もし興味があるのなら…といって教えてくれた、家の近くのBio(自然食やオーガニック系のものを売っている)のお店に行く。
この家へ来て、初めての買い出し。
朝食用にフルーツジュースやパン、バターを買う。毎朝、目覚ましに必ずお茶を飲むので、セイロンティーのティーバッグも買う。
スーパーへ行くと、日本ではみかけない食材が置いてあるのが楽しい。Bioの専門店に入ったのは初めてなので、なおさら物珍しく、置いてある商品をチェックしながらゆっくり買物。
私は特別Bioにこだわりをもっているわけではないが、できるだけ身体にいいものを摂りたいという思いはある。最近、フランスではBio製品が流行っているらしく、パン屋でもBioマークをつけて天然酵母のパンを売りにしているところ、スーパーの商品でもBioマークのものをよく見かける。
午後、グザヴィエの家でPC作業。
3時にRépublique(レピュブリック)の本屋"L'Arbre à Lettres"(ラーブル・ア・レトル/3区)に行く予定だったので、そろそろ出かけようか、というところで雷が鳴り出し大雨が降ってきたため、しばらく待たされる。
この本屋の店長はグザヴィエの友だちで、16日に「甲斐とフランス人作家の仲間たち」というテーマでサイン会&本の即売会というイベントを開いてくれることになった。
先週から、このブック・フェアのために、店のショーウィンドーには甲斐の写真集や写真をディスプレイしてくれているというので、見に行く。ついでにそのとき置いてもらう写真集を段ボールにつめ、グザヴィエが台車に乗せて運んでくれる。
ショーウィンドーには、甲斐の写真集、写真、ポスター、紙袋を飾ってくれていた。
甲斐の写真集の横には、エマニュエル・ギベールの画集「japonais」とその原画、フィリップ・アダムの小説「Canal Tamagawa/玉川上水」、ジャン・フィリップ・トゥーサンの甲斐へのメッセージなども飾ってあった。
店内には、甲斐の写真集コーナーが作ってあった。
下の平積みをよく見ると、北野武、カルティエ・ブレッソンの本も置いてあり、「タケシやブレッソンよりも上にある!」と大喜びする。
店長のジャン・バチストさんに、猫と子どものポスターを10部ずつと、ブックフェアに置いてもらう写真集も渡す。
本屋を出ると、オープニング・パーティーの時にきてくれた、中国人留学生の呉昊さんに教えてもらった、パリで一番安いフィルムの店に行く。本屋から近い場所だったので、そのまま歩いて行くことにする。
"Sels d'argent"という店。
ここではKodakのTriX(36枚撮り)が10本で32ユーロ(1ユーロ112円くらい)。確かに安い。先日、矢野さんからフィルム100本もらったばかりで甲斐のパリ滞在も残りわずかなのだが、安いので20本購入する。
他の、印画紙などの値段も聞いてみると安かった。
これならパリで暗室を作っても良さそう、と言い合う。
フィルムを買った後、バスティーユの古着屋・クリストフの店"Brutal's"に行って、20日の一日イベントの打ち合わせに行く。
写真集と写真を置いて、即売会をする。どこでききつけたのか知らないが、日本人歌手のkumi-soloという女の子が、その日、歌を歌いたいといってきているらしい。
クリストフは、写真、写真集、ポスター、ポストカードが売れたお金は全部甲斐にそのまま渡す、と言う。でもその代わり、甲斐の写真を一点欲しいという条件を出してきた。
彼は数年前、ほんやら洞にきて、甲斐のバライタの写真を買いたいと言っていた。今回のパリ展のオープニング・パーティーにもやってきて、バライタの写真はあるか、ときいてきた。だから写真を買ってくれるつもりなのかな、と思っていたのだが、いつの間にか、彼の店でイベントをやるという話になり、今は、その代わり、写真をくれと言っている。
私は、クリストフが言っていることをそのまま甲斐に伝えると、甲斐は何も考えず、OK!と言ったので、「本当にいいの?だって、この写真、ギャラリーでは1500ユーロもするのに、せめて何ユーロ以上売れたら、というようにした方がいいんじゃないの?これでは向こうの条件が良すぎるんじゃない?」と言うが、甲斐は面倒くさがって、それでOKだと返事をする。
何だかイヤな思いが残ったが、クリストフに礼を言って店を出る。
そこでグザヴィエとは別れ、ギャラリーへ行く。
昨日アングレムから帰ってきて、明日日本に帰るというジェロームがギャラリーに見に来てくれた。彼は、甲斐の写真(写真集「路地裏の京都」の表紙に使った写真)に文章(オマージュ)を書いてくれている。
夜は、友人のベトナム系フランス人のユムさんとベトナム料理を食べに行くけど、よかったら一緒にどう?と誘ってくれたので、一緒に行くことにする。
メトロの駅まで歩くというので、ジェロームについて歩いて行くと、チュイルリー公園の中を通って随分歩かされる。どこまで行くのかと思っていると、途中でジェロームは「ごめんなさい。遠回りしてしまいました」といって謝る。
甲斐は重い荷物を背負っていたので、辛そう。
いつもなら「約何kgの荷物を背負って何km歩いた」とか言って自慢するのだが、今日は珍しく弱音をはいていた。
結局、待ち合わせ時間には30分ほど遅れるが、ユムさんは他の店で時間をつぶして待ってくれていた。
Place d'Italie(プラス・ディタリー)のチャイナタウンにあるベトナム料理店へ4人で行く。
何人かの人から、プラス・ディタリーに美味しいフォーの店があるときいていたので、同じ店かもしれないと期待していたが、記憶している場所とは違った。
フォーを食べてみて、やっと、ベルヴィルの店のフォーはやっぱり美味しいのだということに気づく。肉の火の通し加減や、麺が、微妙に違う。この店のフォーも不味くはないが、ベルヴィルのフォーは飽きない味なのだ。
甲斐は、ジェローム曰く「ベトナム人しか飲まない」という、ココナッツミルクに小豆がたっぷり入ったドリンクを注文していた。